フランソワーズ・ドルト「子どもの精神分析セミナー」試訳
フランソワーズ・ドルト(Françoise Dolto, 1908-1988)はフランスの児童精神科医です。彼女は子どもの精神分析家としてフランスではお茶の間でも大変有名で人気のあった人物です(彼女の子ども達のうちのひとりが、コメディアンとして活躍しています)。トゥルソー病院での臨床や専門家向けの教育活動だけではなく、ラジオ番組で定期的に子どもに関する相談にのったり、”緑の家”と呼ばれる幼児と保護者のための施設を創設するなど、精力的に活動し、児童の精神分析や教育分野で多大な貢献をしました。彼女の出たテレビ番組を見てみると、語り口がとても明快で分かり易くかつ一種の迫力も自然に備わっていて、知的な肝っ玉母さん(?)といった風の女性に見えます。また、同時代のジャック・ラカンとも近い人物で、ラカンのセミネールでもドルトとラカンのやり取りがなされ、記録されてもいます。
ドルトの著作は翻訳されているものも幾つかありますが、いまだ翻訳されていないものもあります。そのうちの一つ、「子どもの精神分析セミナー」(Séminaire de psychanalyse d’enfants, éditions du Seuil, 1982)は3巻本になりますが、これは子どもの臨床に直接携わる人たちを対象としたセミナーの収録です。そこには患者である子どもとドルトが直接その場で面接をする”患者呈示”についても、彼女自身のコメント付きで収録されています。
ラカンは新しい精神分析の形や理論を作っただけではなく卓越した臨床家でもありましたが、ドルトもまた非常に優れた臨床家でした。この本は面接場面で臨床家が子どもとどう関わったら良いのかが具体的に分かる良書です。専門家だけでなく、悩み苦しんでいる子どもの考えていることを知りたい人にお勧めです。
本の一部の試訳を、PDFファイルにして載せます(試訳であることをご承知の上、ご利用下さい)。もし何らかの問題がある場合は、お知らせください。
子どもの精神分析セミナー フランソワーズ・ドルト (タイトルは仮につけたものです)
第一回 子どもと真実
https://www.cocoro-mori.net/wp/wp-content/uploads/2021/11/49ef72b19c9b2addea8db508ca9b00b7-2.pdf
第二回 親の症状としての子ども
https://www.cocoro-mori.net/wp/wp-content/uploads/2021/11/20cfce153c6dcbd30dc35695758066ae.pdf
第三回 様々な去勢 いかなる去勢も受けてこなかったカティアの症例
https://www.cocoro-mori.net/wp/wp-content/uploads/2021/11/041c8e89b678b46731ac2144bc87c2e7.pdf
第四回 様々な去勢2 恐怖症など
https://www.cocoro-mori.net/wp/wp-content/uploads/2021/11/3d286c066077720590e492e614c9bbcc.pdf
第5回 自分で創作した言語しか話さないディディエの症例
https://www.cocoro-mori.net/wp/wp-content/uploads/2021/11/588f5dc5c85286438783f2302a488dbe.pdf